感想


ここでは加納作品を読んでの私の感想を書いて
 いこうと思います。参考になれば嬉しいのですが。


 『ななつのこ』(創元推理文庫@鮎川哲也賞受賞作)
表紙に惹かれて手にした『ななつのこ』にぞっこん惚れ込んだ
駒子は、ファンレターを書こうと思い立つ。わが町のトピック<ス
イカジュース事件>をそこはかとなく綴ったところ、意外にも作
家本人から返事が。しかも、例の事件に客観的な光を当て、も
のの見事に実像を浮かび上がらせる内容だった――。こうして
始まった手紙の往復が、駒子の賑わしい毎日に新たな彩りを添
えていく」(文庫版、裏表紙より)



 記念すべき加納朋子さんのデビュー作。私がはじめて読んだ
加納作品もこれでした。加納さんの描き出すファクターがこの作
品には凝縮されていると感じます。七編の短編が収められた連
作短編集の形になっていて、ラストの「ななつのこ」ではそれまで
隠されていた全体像がみるみる浮かび上がってくる――そうい
った巧みな構成になっています。本書には、今や北村薫氏と並
び「日常の謎」派の旗手となった加納朋子さんの全てが詰まって
います。やはり、加納作品に手を出すならこれから入ってもらい
たい、と思います。

――大切な謎はいくらでも日常にあふれていて、
そして誰かが答えてくれるのを待っていたのです……。

 『魔法飛行』(創元推理文庫)
もっと気楽に考えればいいじゃないか。手紙で近況報告するく
らいの気持ちでね――という言葉に後押しされ、物語を書き始
めた駒子。妙な振る舞いをする<茜さん>のこと、噂の幽霊を
実地検証した顛末、受付嬢に売り子に奮闘した学園祭、クリス
マス・イブの迷える仔羊……身近な出来事を掬いあげていく駒
子の許へ届いた便りには、感想と共に、物語が投げかける「?」
への明快な答えが!」(文庫版、裏表紙より)



 駒子シリーズの第2作。駒子は「物語をかいたみようか」と思
い、身近に起った出来事――小さな謎を綴る。それを読んだ瀬
尾さんは、また見事に謎を解き明かす。……そして、そう「きれ
いなガラス玉に糸を通して首飾りができ上がるように」(有栖川
有栖)、作品の背景を成す「物語」が露わになるのです。巧みな
伏線と物語の間に挿入されている謎の手紙。確かに、この作品
には加納さんの魔法がかかっています。

――論理じゃない、魔法だ。

 『掌の中の小鳥』(創元推理文庫)
ここ<エッグ・スタンド>はカクテルリストの充実した小粋な店。
謎めいた話を聞かせてくれる若いカップル、すっかりお見通しと
いった風の紳士、今宵も常連の顔が並んでいます。狂言誘拐を
企んだ昔話やマンションの一室が消えてしまう奇談に興味はお
ありでしょうか? ミステリがお好きなあなたには、満足していた
だけること請け合い。――お席はこちらです。ごゆっくりどうぞ
(文庫版、裏表紙より)



 加納さんが「もし自分が男だったら、確実に惚れちゃってたに
違いない女の子」と言うヒロインと「僕」を中心に描き出される物
語は、本格ミステリでありながら登場人物の魅力を充分に発揮
させた恋愛小説でもあります。私は、加納さんの作品の中でこ
の『掌の中の小鳥』が一番好きです。ミステリとしては「自転車泥
棒」、そういう枠とは関係なく言うならば「できない相談」が個人
的にはベストです。恐らく、この続編を読みたいと思っている加
納ファンの方は沢山いるのではないでしょうか。

――真っ赤な天使の横顔に、乾杯。

 『いちばん初めにあった海』(角川文庫)
堀井千波は周囲の騒音に嫌気がさし、引越しの準備を始め
た。その最中に見つけた一冊の本、『いちばん初めにあった
海』。読んだ覚えのない本のページをめくると、その間か未開封
の手紙が……。差出人は<YUKI>。だが、千波にはこの人物
に全く心当たりがない。しかも、開封すると、「私も人を殺したこ
とがあるから」という謎めいた内容が書かれていた。<YUKI>
とは誰なのか? なぜ、ふと目を惹いたこの本に手紙がはさめ
れていたのか? 千波の過去の記憶が辿る旅が始まった―
―。心に傷を負った二人の女性の絆と再生を描く感動のミステ
リー」(文庫版、裏表紙より)



 加納さんの第4作目。2編の中編が収められていて、これまで
の作品群とは違い、それが完全な連作になってはいません。あ
るいは単独の作品として見れるのです。もちろん、2つの中編は
関連しているのですが……それは本書を読み終えた人ならわ
かるはずです。新たな可能性に挑戦した加納さんの意気が作品
全体を覆っているように感じました。

――だけどね、実はこの問題も
見事に解決する方法があるんだよ。

 『ガラスの麒麟』(講談社文庫@日本推理作家協会賞受賞作)
『あたしは殺されたの。もっと生きたかったのに』。通り魔に襲
われた17歳の女子高生安藤麻衣子。美しく、聡明で、幸せそう
に見えた彼女の内面に隠されていた心の闇から紡ぎ出される6
つの物語。少女たちの危ういまでに繊細な心のうるえを温かな
視線で描く、感動の連作ミステリ。日本推理作家協会賞受賞
」(文庫版、裏表紙より)



 巧い。私が『ガラスの麒麟』を読み終えた時の感想はそれでし
た。本書は第48回日本推理作家協会賞を受賞した短編「ガラ
スの麒麟」を収録した連作短編集です。『ななつのこ』『魔法飛
行』などで見せてくれたあのラストの素晴らしさをこの作品でも見
せてくれています。繊細な少女たちの心と、本格ミステリとしての
巧みな伏線の使い方は見事という他ありません。私的にも加納
作品を語る上で外せない1作です。

――加納さんの作品が優れたミステリとメルヘンの
融合であると同時に、いや、それ以前に、温かい
≪愛の物語≫でもあったことを思い出しました。

 『月曜日の水玉模様』(集英社文庫)
いつもと同じ時間に来る電車、その同じ車両、同じつり革につ
かまり、一週間が始まるはずだった――。丸の内に勤めるOL・
片桐陶子は、通勤電車の中でリサーチ会社調査員・萩と知り合
う。やがて二人は、身近に起こる不思議な事件を解明する<名
探偵と助手>というもう一つの顔を持つように……。謎解きを通
して、ほろ苦くも愛しい「普通」の毎日の輝きを描く連作短編ミス
テリー」(文庫版、裏表紙より)



 普通のOLである陶子が、萩と出会い「日常」の中の「非日常」
という魅力ある謎に挑む、加納さんお得意の連作短編集です。
月曜日から日曜日まで、七つの謎が読者を強烈に惹きつけま
す。『レインレイン・ボウ』という姉妹編もありますが、是非、こち
らから手にとってもらいたい作品です。

――しかし、陶子は今、どんな言葉も、どんな事実も、
穏やかに受け止められる自信があった。

 『沙羅は和子の名を呼ぶ』(集英社文庫)
もしもあの時、別の選択をしていれば、全く違う人生を歩んで
いたのだろうか……。平凡な会社員・元城一樹のふとした夢想
が、すべての始まりだった。一人娘の和子の前に姿をあらわし
た不思議な少女沙羅。その名前が蘇らせる、消し去ったはずの
過去。やがて、今ある世界とあり得たはずの世界とが交錯しは
じめて――。表題作を含む、全10編を収録。珠玉のミステリ短
編集」(文庫版、裏表紙より)



 加納さんとしては初の純粋な短編集。バラエティ溢れる作品が
集まっています。私が特に好きなのは「オレンジの半分」です。
実はこれある作品と関連しているのです。まあ、それは加納さん
の作品を読んでいればわかると思います。これまでにない加納
作品の側面が見れるという点においても、見逃せない短編集で
あります。

――半分に切ったオレンジに、
一番よく似ているものはなあんだ?

 『螺旋階段のアリス』(文春文庫)
大企業のサラリーマンから憧れの私立探偵へ転身を果たした
筈だったが―事務所で暇を持て余していた仁木順平の前に現
れた美少女・安梨沙。…亡夫が自宅に隠した貸金庫の鍵を捜
す主婦、自分が浮気をしていないという調査を頼む妻。人々の
心模様を「不思議の国のアリス」のキャラクターに託して描く七
つの物語。大手企業を早期退職し探偵事務所を開業した仁
木。押し掛け助手の謎の美少女・安梨紗に助けられ、持ち込ま
れる難題をズバリ解決!」(amazonより)



 アリスシリーズの第1作です。脱サラ探偵仁木と美少女安梨沙
が事件を次々と解決していきます。「不思議の国のアリス」の使
い方も非常に巧みで、違和感なく融合しています。「螺旋階段の
アリス」「裏窓のアリス」とはじまってラストの「アリスのいない部
屋」では……。読者の期待を裏切らない、完成度の高い作品だ
と言えます。

――実は私はね、私立探偵なんだ。

 『ささら さや』(幻冬舎)
夫を突然の事故で失ったサヤは残された赤ちゃんのユウ坊と
ふたり「佐々良」という街へ移住する。そこでは数々の不思議な
事件がサヤの身にふりかかる。けれどその度に亡くなった夫が
他人の姿を借りて助けに来てくれるのだ。また久代、夏、珠子と
いう三人のお婆さんや、エリカとダイヤ親子という素敵な友だち
もできた。しかし、そんなサヤに夫の家族がユウ坊を引き取りた
いと圧力をかけてくる。そしてユウ坊が誘拐された…。ゴースト
になった夫と残された妻・サヤが永遠の別れを迎えるまでの切
なく愛しい日々を描く長編ミステリ小説」(amazonより)



 夫を突然の事故で失ったサヤは残された赤ちゃんのユウ坊と
「佐々良」という街へ移住した。……不思議な事件が起こる度に
亡き夫が他人の姿を借りて現れる――そんな感じで続いていく
物語。読者は恐らく、ヒロインのサヤの行動に憤り時に助けた
いという気持ちをもつことでしょう。もどかしい思いをしながら読
み進めるにつれ、サヤは少しづづ母としてもひとりの女性として
も成長していきます。感動のミステリです。

――だから、君に言うよ。最後に。
サンキュ、サヤ、そして、バイバイ。

 『虹の家のアリス』(文藝春秋)
育児サークルへの嫌がらせの犯人は? 連続殺猫事件の真相
は?仁木探偵事務所に持ちこまれる様々な謎は、美少女安梨沙
の助けで鮮やかに解決する。「アリス」と猫とティータイムを愛す
る名探偵登場」(amazonより)



『螺旋階段のアリス』の続編。文藝春秋、本格ミステリーマスター
ズとして出版です。「虹の家のアリス」「牢の家のアリス」「猫の家
のアリス」「幻の家のアリス」「鏡の家のアリス」「夢の家のアリ
ス」の全6編を収録。加納さんご本人のスペシャル・インタビュー
や著作リスト、また解説も付いていますのでお買い得な一冊で
あります。

――安莉紗は、赤ん坊のように
無垢な笑顔を浮べてみるのであった。

 『コッペリア』(講談社)
人形をテーマに綴る新境地を拓くサスペンス。恋をした相手は
人形だった。しかし生き写しのような女と出会ってしまった。そし
て女もまた、自分にそっくりな人形と出会う。人形に憑かれた
人々が織りなす情念のアラベスク」(amazonより)



 初の長編。少しダークさを醸し出しつつ、「人形」を中心とした
妖艶な物語が展開されます。二つの視点から語られるストーリ
ーはもちろんミステリとして完成されていて、最後には「!」と驚く
こと請け合いです。魅力的なキャラクターが際立った、新たな可
能性を感じさせる異色作です。

――これから始まるのは新しいゲーム……。

 『レインレイン・ボウ』(集英社)
『いまどきの』なんて言葉でくくって欲しくない、七人七色の今。
虹の橋は、未来へとつながっているのだ…。高校卒業から7年。
7人の仲間が集まって、7つの物語が交錯する、爽やかな青春
群像」(amazonより)



 7つの短編を収めた短編集。連作的というのだろうか、それぞ
れつながりはある。『月曜日の水玉模様』の姉妹編で、『月曜日
〜』のヒロインである片桐陶子の高校時代の部活仲間が、それ
ぞれ登場する。加納作品であるからミステリ的なファクターはあ
るのだけれど、『月曜日〜』や駒子シリーズのようにそれを全面
に押し出しているのではなく、彼女たちのそれぞれの日常を巧
みに描き出しながら、そこにちょっとスパイスのように加えた、と
いうような形になっています。個性的な大人の女性たち――まさ
に七人七色。『レインレイン・ボウ』は、加納さんの筆力をそのま
ま作品に映し出すことに成功した作品のように感じます。七つの
短編はどれも二十代半ばの女性たちをリアルに表現していま
す。私が好きなのは、「スカーレット・ルージュ」、「雨上がりの藍
の色」それからラストの「青い空と小鳥」でしょうか。

――陶子は聞きたいと思った……陶子に理解
できること、理解できないことをひっくるめたすべてを。

 『スペース』(東京創元社)
クリスマス・イブを駆け抜けた大事件のあと、大晦日に再開し
た瀬尾さんと駒子。ふたりのキーワードは“謎”。『ななつのこ』
『魔法飛行』に続く、待望久しい駒子シリーズ第三作」(amazonよ
り)



 待ちに待った駒子シリーズ最新作『スペース』です。ファンとし
ては、内容云々以前にそれが出版されたと言うことだけで嬉し
いものです。この時のために「スペース」をダウンロードせず、
『ミステリーズ!』を買っても、「バック・スペース」をあえて読まな
かったのです。……で、感想ですが、これはネタバレなしには上
手く語れませんね。私は加納朋子フレーバーを感じるだけで幸
せなので、客観的な評価は到底できませんし。本作に限らず、
駒子シリーズのキーワードは<手紙>であり<物語>であり<
謎>です。『スペース』ではその中でも、<手紙>という概念を
主題に置いています。もちろん、その内に隠されている<謎>
も、瀬尾さんによって鮮やかに解かれ、読者を唸らせます。「バ
ック・スペース」の最後の<手紙>は、未来(駒子シリーズの続
き)への伏線とも言うべきで――確か『ZERO(仮)』という題名
の予定だったと思います――期待させられますね。……本書
『スペース』は『ななつのこ』『魔法飛行』のようにミステリの部分
を全面的に押し出してはいません。むしろ「恋愛小説」だと捉え
ること出来ます。
――突然垂れ落ちそうになった洟を必死ですすり
上げながら、私は何度も何度も、懸命にうなずいていた。


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                mail - boxbox00@yahoo.ne.jp

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