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平成16年5月9日の1冊

アース・リバース』(三雲岳斗/角川スニーカー文庫)



 第5回スニーカー大賞特別賞受賞作にして、三雲岳斗のスニーカー
文庫初登場作品。
 裏表紙には次のように書かれています。

 「……灼熱の溶岩に地表を覆われた世界――炎界(フレイムシー)。
人型航空平気≪天使もどき(デミ・エンジェル)≫で要塞都市(リダウ
ト)の防衛にあたっていたジグ・クルーガーは、不時着した敵機から這
い出した少女ティアを撃つことができない。少女は告げる――「世界
の果て(ワールド・エンド)を見に行こうと思ったのよ」と! 彼女を救っ
たために逃亡者となったシグを追い詰めるのは姉のレネが指揮する
高速巡航空母と、美しき女狙撃主、イザベル。世界の果て(ワールド・
エンド)に楽園の扉(ヘヴンズ・ゲイト)は存在するのか? 炎界の謎と
は?」 
 
 さて、本書の作者、三雲岳斗は98年に第5回電撃ゲーム小説大賞
で銀賞を、99年には第1回SF新人賞を受賞しています。そして、20
00年に受賞したのが、スニーカー大賞特別賞なのであり、その受賞
作がこの『アース・リバース』です。

 シリーズものではなく、1冊で完結。良く出来たプロットと三雲岳斗の
丁寧でリズムのよい文章。わずか250ページ強の中で、無理なくこの
物語をまとめています。……私は三雲岳斗の作品をそれほど多くは
読んでいないので説得力はないかもしれませんが、氏の小説の中で1
番好きだ、ということを言っておきます。
 シグのヒーロー性も、ヒロインのティアのキャラ付けも、あるいはステ
レオタイプ的なのかもしれません。けれども、それが逆に――そう、か
えって魅力的に仕立てている、と感じます。絵師の中北さんの力も、も
ちろん、有機的に機能しているのでしょう。
 典型的で、正統的な冒険もの――ロボットもの。左の作品説明が、
誉め言葉として作用する、そんな作品です。

 特に私が好きで好きでたまらないのが、ラストシーンです。
 以前、2ちゃんねるのライトノベル板でしたか(詳しくは覚えていない
のですが)、「思わず鳥肌がたったシーン」を書き込むというスレがあり
まして、そのスレにカキコしてしまったほどです。おなじみの「同意」と
いうレスがついたので、少なくとも私だけがそう感じていたわけではな
いようです。
 シグとティアが地上へ向かう、美しいシーン――。
 
 やがて、遥か遠くに光が見える。地上の光だ。
 これから先、どっちに向かえばいいのか?
 そんなことを思って、シグは苦笑する。
 考えるまでもないことだった。ティアの答えは最初から
わかりきっている。
 訊けば、彼女は迷わずこう答えるだろう。
 未来へ。

 ……もし、「未来」が「青い空。広大な大海原。美しい緑の大地――」
のような、光の射す美しい世界であるとするならば、本書『アース・リバ
ース』は確かに、読者をその魅力的な「未来」へと連れて行ってくれる
ことでしょう。

           (ISBNコード 4-04-424101-5 /ページ数 262) 
  


 平成16年4月10日の1本

ドラゴンクエストX 天空の花嫁』(スクウェア・エニックス)



 強き心は、時を超えて――。
 これは1992年にスーパーファミコンソフトとして発売されたものをリ
メイクしたもの。グラフィックが綺麗になり、フィールドやキャラクター、
モンスターも3D化。ドラクエXを本質は保ちながら、新たな部分を見
せ付けてくれる。もしかしたら、同梱の『ドラゴンクエストVIII』プレミアム
映像ディスク目当てで買っている人もいるかもしれません。
 
 この壮大な「物語」の根本にあるのは、やはり主人公の「成長」であ
り、「家族愛」であると思います。父の死、という残酷な現実が主人公
を強く大きく成長させます。――父との死別、仲間たちとの出会い、結
婚、出産……と人生においての重要なイベント起こりつつ進むストーリ
ーは、12年という時を経ても全く色褪せません。むしろ、その素晴らし
さに改めて気付きます。
 ゲームシステム的に言うと、戦って勝ったモンスターを仲間に出来て
一緒にパーティーを組める、というのは大変魅力的です。お金稼ぎや
経験値集め以外にも、モンスターたちと戦う目標が出来ますし。仲間
にしたいモンスターを倒して、名前を付けて、ともに戦っていくうちにど
んどんと愛着も湧いてきます。モンスターにも個性があるのですね。
 
 私はこのゲームをスーファミ版でもプレイしたことがあるのですが、
幼かったこともあるし、途中までしか(たしか結婚直後)プレイしていな
かったので、「新作」として楽しめました。
 とても主人公に感情移入しやすいゲームであるし、今回導入された
会話システムは、プレイヤーをゲームの世界に引き込みます。家族4
人で街を歩き、会話システムを利用して話したりするのは、面白かっ
たですよ。
 ……恐らく、やろうと思えば、最近の映画のようなRPGのようにリア
ルなグラフィックに出来たでしょう――キャラもさらに鮮明になって、ア
ニメーションも挿入、なんてことも。でも、私はそういうビジュアル思考
のRPGはドラクエ――少なくとも『ドラゴンクエストX 天空の花嫁』で
はないように思います(もちろん、今後のドラクエはそのようなな進化
をするでしょうし、私はそれに否定的なわけではありません)。
 RPGの魅力、というのはあくまでもストーリーにある、と改めて思い
知らされました。ストーリーこそ、RPGの本質なんだ、という気がしま
す。――人を感動させ、その世界観に引き寄せ、楽しませるストーリ
ー……「物語」。それがこの『X』にはあります。
 
 初めての方にも、スーファミ版をプレイした方にも、お薦めできる傑
作だと確信しています。
(プレイステーション2 /定価 7800円) 


平成16年4月2日の1冊

中井拓志著 『レフトハンド』(角川ホラー文庫)



 管理人プロフィールのところにも書いている通り、私は中井氏の大フ
ァンである。この『レフトハンド』に出会って以来、彼の作品は全て購入
し、読んでいる。……と言っても、彼は現時点において3冊しか出して
ないんだけど。
 本書は第4回日本ホラー小説大賞の長編賞受賞作である。第4回
のホラー大賞と言えば、大賞には貴志祐介氏の『黒い家』、短編賞受
賞作には沙藤一樹氏の『D−ブリッジ・テープ』が選ばれている。豊作
の年だったと言えるのではないだろうか。

 某研究所でウイルスが漏洩。ウイルスの通称は「レフトハンド・ウイ
ルス」。未知にウイルスであり、なんと致死率は100%である。事件
後、主任である影山が研究所を乗っ取った。要請は研究の続行であ
り、受け入れなければウイルスを外に漏らす、というものであった。…
…体液感染だけでなく、空気感染もある「レフトハンド・ウイルス」――
LHV。感染すると左腕上皮に裂け目ができ、『左腕』が『脱皮』し、死
亡してしまう。
 どうです、このあらすじだけでもワクワクしませんか?
 約500ページのこの作品は、壮大な映画並のエンターテイメント性
が詰まっている。そうはいっても、スケールはそれほど大きいようには
感じられない。けれども、風船が爆発する寸前のような、小さな箱にお
さまり切らないような印象を受ける――。
 それにしても、このアイデアにはぶったまげました。なんたってウイ
ルスに感染すると『左腕』が『脱皮』して、生命を宿すのですから。ハッ
キリ言って恐怖感はあまりない。そういう意味においての「ホラー」では
ないです。むしろ「恐くないバイオホラー小説」です。滑稽で、恐くなく
て、面白い。
 キャラたちのやり取りもいい味を出していて、私は本当に好きなんだ
よなぁ……この小説。是非、映画化して欲しいんだけど(笑)。
 
 中井氏の作品は他にも角川ホラー文庫から『quaerter mo@n』と
『アリス』が発売されています。どうも遅筆みたい。私は前者は『レフト
ハンド』に勝るとも劣らない傑作だと思っている(後者は私的にハズレ
でした)。ネットに興味があるなら、前者は楽しめること請け合い。

(ISBNコード 4-04-346401-0 /ページ数 486) 
 


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